先日、朝のテレビ番組で内田也哉子さんのインタビューが
放送されていました。
内田也哉子さんの母、樹木希林さんは誰もが知る個性派女優。
類まれなる個性に驚かされたり感心したりしたものです。
私の母まさこも樹木希林さんが大好きでした。
希林さんが旅立った当時は
母まさこの在宅介護が始まって2か月が過ぎた頃。
希林さんの訃報を伝えると、
まさこは驚いた表情をして右足がビクッ!!と動きました。
まさこは寝たきりで
自力で寝返りを打つことは出来なくなっていましたが、
掛布団が持ち上がるほど右足を動かしたので
私は言葉を失うほど驚きました。
NHKのニュースで朝ドラ「はね駒」の話が出ると
まさこはそう!そうだった!と思い出したように
生き生きした表情を見せます。
口数が少なくなっていたまさこですが
言葉は出なくとも、心の中ではいろんな思い出が駆け巡っていたのでしょう。
さて、内田也哉子さんの話に戻します。
也哉子さんは母希林さんを見送った後、
わずか半年で父内田裕也さんも見送っています。
一人っ子の也哉子さんは
両親を見送った後、心が「空っぽ」になったとか。
「空っぽ」は、両親の最大の置き土産かもしれない。
「空っぽ」になって一人で歩きだす自分は
両親との別れで「切なさと清々しさ」を感じている。
これからは少しでも人の役に立てたらいいな、と
語る也哉子さん。
内田也哉子さんが綴る「喪失という名の空っぽ」を満たす心の旅(集英社)
「切なさと清々しさ」という言葉に
私は瞬時に共感し、胸が熱くなりました。
そして、ある方の「清々しい」姿を思い出しました。
それは私が学生時代のお話です。
「生涯学習」についてアンケート調査をするため、
先生と学生達である地方都市に出向きました。
協力してくださる方々を訪ねて
「自主的に何か学んでいますか」等、いろいろ質問します。
お会いした十数名のうち、
今でも忘れられないほど衝撃を受けた方が3人います。
1人は「介護を終えたばかり」という女性でした。
女性は出かける直前だったようで、
家の前で立ち話しながらアンケートに答えてくださいました。
「今までは介護で(学びは)出来なかった」、
「介護が終わったのでこれからやります」と
女性は実に晴れやかな表情でお話してくださいました。
お話したのは3分位だったと思いますが、
女性は話し方も表情も活気があふれていて
清々しいオーラに包まれているように見えました。
(この女性のようなイメージの方でした)
当時は介護保険制度が始まる前。
女性が介護したのは義理の親なのか、
介護生活はどのくらい続いたのか、など
今なら聞いてみたいことはありますが
学生だった私にそんな質問は思いつくはずもなく・・・
介護を終えるとこれほどまでに清々しくなるのか、
それだけ介護は大変なのかと衝撃を受けました。
女性のお顔はすっかり忘れてしまいましたが、
晴れやかで生き生きしたお姿は今でも目に焼き付いていて
まさこが旅立った後、何度も思い出しています。
そしてこう自問します。
私はあの女性のように生き生きしているだろうか、と。
内田也哉子さんが語った「切なさと清々しさ」が
心に刺さり、瞬時に共感できたということは
いま現在の暮らしは充実しているのかもしれません。
故郷での暮らしはのんびりしていいものです。
けれど、それは決して暇な暮らしではなく
達成したいことや課題は常にいくつかあり、忙しくしています。
まさこが旅立った直後は、悶々として
心の整理がつかないこともありました。
が、こちらで書いているように
四十九日の頃には晴れやかな気持ちで過ごせるようになっています。
まさこの早い旅立ちを疑問に思ったこともありますが、
私は「時間」という大事なものを授けてもらったのだと
感じるようになりました。
在宅介護していた頃は、まさこと共有していた時間を
いまは自分の時間として使うことができます。
いまできることを精一杯やってみる、
そんな過ごし方ができるのは今だからこそ。
両親が残してくれた環境にも感謝しつつ
日々の暮らしを心豊かに送っていこうと思います。
BLANK PAGE 空っぽを満たす旅 [ 内田 也哉子 ]