5月1日水曜日。
まさこは入院してから5日が経過しました。
自宅では頻繁におしっこの管が詰まっていたので、
入院してすぐ、管を一つ大きいサイズに変更。
今のところ、管の詰まりも血尿も無く安定しています。
が。
まさこは入院翌日から熱を出しています。
話しかければ答えるものの、
自宅にいるときほどの元気はありません。
4月で平成が終わることも
元号が変わることも、まさこは理解しているのかビミョーな感じ。
そこで。
昭和最後の日にどこにいたのか聞いてみると
「病院」とすぐに答えました。
昭和64年1月6日。
まさこと私は病院にいました。
その日、近くに住んでいたまさこの実父が入院。
当時、まさこは専業主婦。私は学生で冬休み。
私たち2人は時間の融通が利く生活をしていたので
2人でまさこの実父に付き添うことにしました。
まさこの実父は、入院してもしっかりしていましたが
「昭和天皇と一緒に死ぬ」と言っていました。
6日の夜。
先に私が付添者用のベッドで休み、
まさこは寝ずに実父のそばにいました。
そして。
私の夢に、まさこの実母が出てきました。
まさこの実母はすでに亡くなっていましたが
私たちの病室に入ってきました。
「迎えに来たよ」と。
まさこも私も「まぁ、おかきでも食べて」と普通に会話し、
一緒におかきを食べました。
そこで私は目を覚ましました。
目が覚めたら急に怖くなり、まさこに夢の話をしました。
まさことは交代で休むつもりでしたが
私は話をして安心したせいでしょうか、またすぐに寝てしまいました。
そして翌朝。
同じ病室の方が聴いていたラジオで、昭和天皇の崩御を知りました。
まさこが「昭和天皇が亡くなったよ」と言うと
実父は「うん」とか「わかった」という返事をしていたようです。
そして。
昭和天皇崩御の知らせを聞いてほどなくして
まさこの実父は意識が無くなりました。
夜中には自力でトイレに行っていたまさこの実父。
昭和天皇の後を追うように息を引き取りました。
まさこは号泣して取り乱しています。
昭和天皇と一緒に死ぬと言っていたこと、
私が夢に見たこと、どちらも現実になり
驚きのあまり、私は茫然と立ち尽くしていました。
昭和最後の日。
まさこと私は病院にいて、まさこの実父を見送りました。
要介護になってから、まさこはもの忘れが多くなりました。
が、昭和最後の日を思い出すまさこは
いつもとは違う表情をしていました。