まさこが旅立った翌日。

いとこが、安置室で眠るまさこに会いに来てくれました。

 

いとこは、父の兄の息子です。

 

父の葬儀で会って以来なので、私は約7年ぶりの再会となりました。

 

いとこは穏やかで物静かな感じの人ですが

1時間以上おしゃべりして帰って行きました。

 

そばで眠っていたまさこも、

長話を聞いて楽しんでいたような気がします。

 

いとこは高校時代の3年間、我が家に下宿していました。

 

我が家から高校までは1km弱。

 

いとこは隣村に住んでいて、普通科の高校が無かったので

我が家に下宿しつつ通学する、という話になったようです。

 

当時、兄は小学校4年生、私は4歳。

私の部屋は不要で一部屋余っていましたから、タイミングも良かったのでしょう。

 

子どもだった私は

「カッコよくて頭のいいお兄ちゃんが来た♪」と

浮かれていましたが(当時はいとこがカッコよく見えました)

まさこの苦労は大変なものだったと思います。

 

まさこは、父が旅立ってしばらく経った後に

「下宿を頼まれて本当に嫌だった」と

たった一言、つぶやいていました。

 

まさこは当時の事をほとんど語りませんでしたが

やりくりも大変だっただろうし、気苦労も絶えなかったでしょう。

 

その後、いとこは東京の大学に進学。

しばらく東京勤めをした後、戻って来ました。

 

隣の市で開業したいとこを、まさこは何かと頼りにしていました。

親戚の中で一番デキの良かった彼を、まさこは誇りに思っていたでしょう。

 

いとこは、まさこのお通夜にも告別式にも参列してくれ

そこで初めて聞いた話がありました。

 

いとこは、まさこのことをこう言っていました。

 

「無駄が嫌いな人だった」

 

これは、後にも同じことを言われました。

そう思った理由は聞きそびれてしまいましたが、

高校時代の多感な彼に、そう印象づける何かがあったのでしょうね。

 

まさこが旅立った後、季節は変わり、年が明け・・・

少しずつ少しずつ、家の整理をしています。

 

まさこが入院している時は、片づけながら

「どうして同じモノがこんなにたくさんあるのだろう」と

思っていましたが。

 

家の中が片付いていなかっただけで

同じモノはそれほどありませんでした。

 

スカートやズボンはたくさんありましたが、

そのほとんどはまさこが自作したもので

買った洋服はごく一部でした。

 

台所に買い置きしてあったのは

水切りネット2つ、フリーザーバッグとラップが数種類。

 

そしてこの懐かしいクレンザー。

1つは使いかけで、買い置きが1つありました。

今は、買い置きしてあった2つ目を私が使っています。

 

食べ物で複数あったのは、いただきものの海苔が数袋とこちら。

 

まさこはホットケーキが大好きでした。

 

それでも、使いかけと買い置きしていたものと

それぞれ1つずつしかありませんでした。

 

「無駄が嫌いな人だった」といとこが言うのもうなずけます。

 

そんなまさこが、唯一、無駄に持っていたモノがこちら。

 

まさこは、血圧や体温、飲んだ薬などを

毎日、ノートに記録していました。

 

まさこは記録することは忘れなかったけれど

ボールペンはすぐ見失うようで、

家のあちこちから出てきました。

 

「100円ショップで買えるから」と言うのが口癖で

唯一これだけが、たくさん持っていたモノでした。

 

「(自分は)全然モノを買っていない」と言うまさこに

「家のあちこちからいろんなモノが出てくるよ」とか

「宝探しみたいで楽しいよ」と私が言うと

まさこはテヘヘと笑っていました。

 

モノの整理はなかなか進みませんが、

いろいろ思い出しながら作業する時間は楽しいです。