私が故郷に戻ったのは2018年5月。
母まさこを在宅介護するためでした。
実際に介護が始まったのは7月初旬。
まさこは口から食べることができなくなっていて
食事は私が食べる分を作っている感じでした。
台所に残っていた調味料や食材は
少しずつ無くなっていき、最後まで残っていたのは
つゆと砂糖でした。
つゆは2つあって、どちらも冷蔵庫に保管されていました。
まさこは1年入院していましたので、その間に
いろんなことを忘れてしまっていました。
でも、台所にあるものはよく覚えていました。
「今日はコレを使ってお料理するよ」と見せると
「何を作るの?」
「味付けはどうするの?」とまさこが言い
私はそんなやりとりがとても楽しくて、嬉しくなったものです。
私は野菜を切ったりする下ごしらえを、
まさこのベッド脇のサイドテーブル上でやっていました。
私のつたないやり方にダメ出ししてくれないかな、
そんな思いでまさこのそばで下ごしらえしていました。
まさこが旅立った後、しばらくしてつゆは使い切りましたが、
砂糖は無くなるまで1年位かかりました。
砂糖は、お料理にはあまり使わないし
お菓子もほとんど作らないのでなかなか減りません。
使い切った後、お料理に砂糖は無くてもいいかなと思い
買わずに過ごすこと数か月。
昨年末、ひょんなことから砂糖を購入しました。
その目的は、冬至かぼちゃを作るため。
台所にあった小豆とかぼちゃを見て、
なぜだか急に作ってみたくなりました。
小豆はまさこが購入していたもの、
かぼちゃは畑で収穫したものです。
かぼちゃはまさこの親友Hさんから苗をもらい、
昨年2回目の収穫を終えました。
Hさんは一昨年の冬至の頃に旅立っています。
冬至かぼちゃを作ると2人への供養になるかな、
そんな思いから、冬至かぼちゃを作ることにしました。
まさこが作っていた冬至カボチャには
さつまいもが入っていて、
小豆の量がとても多いものでした。
こんなふうに、かぼちゃとさつまいもは
小豆に隠れて見えない感じでした。
恥ずかしながら、小豆を煮たのは人生初。
面倒で大変だと思っていたあんこ作りは
それほどむずかしくなく、
手作りあんこのおいしさにすっかり魅了されてしまいました!
大晦日にはお餅用にと、再び小豆を煮ました。
300gの小豆はけっこうな量のあんこになりました。
お餅では食べきれそうにないので、おはぎを作ってみたり。
静かに過ごすお正月も楽しいものです。
昔、家族4人で過ごしたお正月には
まさこが作った大量のあんこが欠かせませんでした。
私たち家族は4人全員、あんこ餅が大好きで
お正月は朝昼晩と食べていたような気がします。
あの頃、まさこは小豆を1kgも煮て
あんこを作っていたのだと、今になってやっとわかりました。