10月は朝晩冷え込むことも多いですが
晴れている日は過ごしやすく、好きな季節です。
この時期、母まさこは毎年のように怒っていました。
その相手は父。
父は山のそばで育ったせいか、
山菜やキノコを採るのが大好きでした。
まさこも父と一緒に山へ行ったことがありますが
体力がついていかず、一度きりで断念。
父はこんな感じの大きいカゴを背負って、
一人で近くの山々へ出かけていました。
春の時期は、山菜の天ぷらやごま和えが楽しみで
家族でたくさん食べていました。
秋のキノコは香り豊かなモノもあり、
こちらの記事でご紹介している香茸(コウタケ)は
子どもの頃は一番苦手でした。
父が採ってくるキノコは山の中で育っていますから
落ち葉や土がたくさんついています。
こんなふうに。
これをキレイにしてお料理するのは母まさこです。
食べきれないほど大量なので、たくさん塩漬けにします。
だから漬物容器がたくさんあったのですね。
父はいつもカゴいっぱいにキノコを採ってきます。
中には香茸(コウタケ)のような高級品もあるけれど、
大量のキノコをキレイにするだけでも大変です。
秋になると、毎週末この作業が続くので
「もう(キノコを)採ってこないで!!」と
まさこが怒るわけです。
まさこが激怒する一方で、父はだんまりなので
夫婦喧嘩にはならないのですが、
次の週末また父がキノコを採ってきて怒られる、
ということを繰り返していました。
ご近所の方からこんな話を聞きました。
ある時、キノコを採り終えた父が
自宅に戻ろうと横断歩道で立ち止まっていると
車で通りかかった方が声をかけました。
「おじちゃん、それなあに?何を採ったの?」と。
お互い知らない者同士だったようですが
父はカゴのキノコを全部その方に差し上げて
またウキウキと山へ戻って行った…
自宅に戻ればまさこに怒られるけど、
カゴが空っぽになればまたキノコを採りに行ける、と
父はウキウキしていたのでしょうね。
まさこが旅立った翌年の秋。
兄と一緒に香茸ご飯を食べに行きました。
そのお店は農園食堂で、ちょっと遠いのですが
山菜やキノコのお料理が楽しめるところです。
兄は父母を連れてお店に何度か行ったことがあり、
店先に並んでいるキノコの値段を見てビックリしたようです。
「昔は何万円分ものキノコを食べてたんだ!」と
父もまさこもしきりに驚いていたようです。
待望の香茸ご飯は、残念ながら売り切れで
代わりにキノコご飯やけんちん汁を堪能しました。
その一週間後。
父母は2人で兄の夢に登場しました。
2人は夫婦喧嘩をしていて
兄は「2人とも旅立ってるのに、なんで?」と静観。
まさこが「もう我慢できない!出て行く!」と言い出したので
「2人とももう死んでるんだよ」と兄が伝えます。
まさこは「えぇっ??」と驚いた反応をするので
兄はこう続けました。
「2人とも骨になって一緒のお墓に入っている、
出て行くなんてできないよ」と。
まさこが出て行く!と言うほどの夫婦喧嘩、
しかも10月ですから
夢の中でも父が大量のキノコを採ってきたのでしょうか。
すでに旅立っているのに、昔と同じ時期に喧嘩するなんて
2人とも元気なのかもしれませんね。