1年前の今日、私はある場所にいました。
そこは、座敷わらしが住んでいると言われ
ここを訪れた後に幸運が舞い込んだ人もいるという所です。
この頃、母まさこは入院中でした。
まさこが私にバイバイと手を振ったのは7月1日。
翌日、わずかに声を出せたものの
それ以降は目を開けても、何も反応しない日々が続きました。
その後、いつも入院していた病院のベッドが空き
無事に転院できたものの、
まさこは目を開けなくなりました。
そして血圧が急低下したり、高熱が出たり、
血液中の酸素濃度が低くなったりと、不安な状況が続きました。
先に旅立っているまさこの両親や父が見守っているはず、
という思いから、お墓参りする回数は増えましたが
それでも私は「何かにすがりたい」気持ちになっていました。
座敷わらしが住んでいる「パワースポット」に行くことは、
眠っているまさこに何度も伝えていました。
そして、もう一つまさこに伝えていたこと。
それは温泉に行くことでした。
まさこは在宅介護がスタートして以降、
半月とか1~2か月おきにちょくちょく入院していました。
入院期間は1か月以上になることがほとんどでした。
私は毎日面会に出かけ、寝ているまさこに話しかけたり
手足のリハビリを続けたりしていました。
ペーパードライバーの私にとって
隣の市の病院に通うことは、体力的に楽ではありませんでした。
在宅介護が始まって間もなく、
「疲れをためず、無理せずに介護を続けることが
自身への最大の課題」と気づき、私はそれを常に意識していました。
そして、できるだけ自身の体力を温存して
省略できるところは上手に調整しよう、といつも考えていました。
そして、まさこが4度目の入院をした時。
季節は真冬。
インフルエンザ流行のため、病院は面会制限の状態でした。
「何かあったら連絡する」と言われて1週間。
病院からの連絡が無い=まさこは悪化していない。
そう判断した私は、温泉に泊まりに行くことにしました。
久しぶりの温泉、久しぶりの友、久しぶりの外食・・・
どれも少し前までは日常だった事が、特別なご褒美のようでした。
そして5度目の入院。
この時は、ゴールデンウィーク10連休の直前でした。
病院も連休になるため、在宅介護に関わっていた方々は
気が休まらなかったと思います。
まさこは入院したものの、予定していた治療がなされず
それでも状態は安定していました。
私は連休明けに、また温泉に出かけました。
そして1年前。
まさこの状態は不安定なままだったので、
私は「ドタキャン可能性大」と考えつつ
温泉とパワースポット行きを計画しました。
2019年7月14日(日)午後。
面会したまさこは、相変わらず目を閉じたままで
話しかけても全く反応しませんでした。
前日より高熱のため心配していると、看護師さんから
「酸素(血液中の酸素濃度)がいいので少し下げました」
「夜になると熱は38℃になるが、39℃とか40℃にはならない」
と説明を受けました。
そしてこんな一言を加えてくれました。
「一段階良くなった感じに見えますよ」と。
この一言がどれほど嬉しかったか。
その後、私は温泉に向かい、何度も何度も
「まさこが私を行かせてくれた」と考えていました。
翌日はパワースポットへ行き、その後病院へ向かいました。
それが1年前の今日。
まさこが旅立つ10日前でした。
今思えば、すごいタイミングで出かけたことになりますね。
当時の私にとっては、何かにすがりたい、心身ともに休みたい、
という一心で行動していたことです。
介護をなさっている方は、それぞれ事情がおありでしょうが
ご自身を後回しにすることなく、
くれぐれもご自身を大事にしてほしいと、心から願っています。